健康エッセイ1月号(掲載日2004年2月12日) 小児科へ戻る |
[予防接種 回数の意義] 同じ種類の予防接種(=ワクチン)を、一度だけでなく、 2-3回受ける必要のあるものがあります。 痛い思いをすることが多い予防接種ですが、その回数に込められた意義がわかっていると (子どもさんには、わかりやすく説明してあげられると)、その痛みも少しは和らぐかもしれません。 ●ブースター(booster)効果 聞きなれない言葉ですが、なぜ接種を繰り返す予防接種があるのかがわかるために、 是非頭へ入れておいて下さい。 ある病原体に対して‥‥ それに有効なワクチン、しかも毎回同じ成分のものを接種したり、ワクチン接種後 自然にその病原体に感染(→感染しても、発症しない場合がほとんど。)したときに、 その病原体に対して体の持つ抵抗力(=免疫)が高まる、ことをいいます。 好きなテレビドラマや映画を、時間をおいて再び見ると、また感動が新たになります。 何となく、そのことに似ています。(笑) ●予防接種(ワクチン)の種類 ワクチンの中で、何回か繰り返し接種が必要なものがある、理由をわかってもらうために、 ワクチンを次の三つに分類します。 少々専門的な言葉ですが、ここがポイントです。 (ワクチンの製造技術などの関係で、どうしてもこの3種類に分けられます。) 1.不活化ワクチン:病原体自体を殺し、その毒性をなくす。そして、その病原体に対して 体で免疫を作れるだけの、(病原体の)成分だけを接種する。 →病原体成分による免疫作り; 何回か接種しないと、十分な免疫が得られない。 (ブースター効果を期待している。) ワクチンの例)百日咳,日本脳炎,インフルエンザなど 2.トキソイド:病原体自体は使わず、 病原体が作る毒素の毒性をなくしたものを原料にしてできた、ワクチン。 →不活化ワクチンのときと同様、何回か接種しないと、十分な免疫が得られない。 (これも、ブースター効果を期待している。) ワクチンの例)ジフテリア,破傷風 3.生ワクチン:生きた病原体の毒性を弱めたものを接種する。 →原則として、1回の接種で十分な免疫が得られる。 (病原体が生きているので、1回の接種で体の中でも、 たくさんの抗体(=免疫)が作られるのに十分な、病原体の増加がみられる。 しかし、毒性は弱められているので、発症はしない。) ワクチンの例)BCG(結核予防のため),ポリオ(ポリオウイルスによる小児麻痺予防のため), 麻しん(=はしか),風しん(=三日はしか),おたふくかぜ,水ぼうそう ●回数で見る、予防接種(ワクチン) 以上のことから、 「何回か繰り返し接種が必要なワクチンは、不活化ワクチンとトキソイドである。 繰り返す目的は、 ブースター(booster)効果により体にその病原体に対する十分な免疫を作ること。」 「生ワクチンは、原則として1回接種でよい。」ということが言えます。 ただ、一つだけ例外があります。ポリオワクチンは生ワクチンなのに、 2回接種が義務付けられています。 ポリオウイルスには、三つのタイプがあります。 2回接種しないと、三つのタイプすべてに免疫ができないのです。 この場合、接種を2回繰り返すのはブースター効果を狙ったものではありません。 ●接種間隔をどのように決めているか? ワクチンでできる免疫は、不活化ワクチン,トキソイド,生ワクチン すべて、 追加接種や病原体の自然な感染がなければ、時間とともにだんだん減っていきます。 特に、不活化ワクチンとトキソイドは、 1回の接種では十分な抗体量(=免疫)が得られないので、 自然な感染がある前に、追加接種によるブースター効果が必要になってきます。 追加接種の時期は、ワクチンによって異なります。 もちろん指示された時期に接種するのが理想的ですが、 体調その他で受けそびれた場合、これは始めからやりなおす必要はありません。 その時は、かかりつけのお医者さんに相談すれば、 今どれくらい体にその病原体に対する免疫が残っているか、 推定して 次どうしたらよいか教えてくれると思います。 □ また、上にも言ったように、ポリオウイルスには、三つのタイプがあります。 2回接種しないと、三つのタイプすべてに免疫ができないのです。 この場合、2回繰り返すのはブースター効果を狙ったものではありません。 2回の接種間隔が6週間以上あいていれば、 たとえそれ以上に間隔が延びていてもだいじょうぶです。 生後3カ月から7歳半までは、公的に無料で受けられます。 とにかく、2回済ませているかどうかがポイントです。 { 7歳半以降でも、接種できます。(多分、有料になるとは思いますが。) } ●トピックス 「生ワクチンの一つである、麻しんワクチン単独での効力はもともと約10年くらいしかなく、 追加接種を検討する自治体も出始めている。」 こんなニュースが流れていました。 「エッ、生ワクチンって1回受ければよかったのでは?」−こう思われた方も多いかと思います。 これまでは、ワクチン接種後も麻しんかにかかった人自体に接触することが多かったわけです。 このことが、ブースター効果にもなっていて、一生高い免疫レベルを保っていたと思われます。 すなわち、麻しんワクチン単独での効力は、一生続くほど高くはなかった、ということです。 ところが、最近、麻しんかにかかった人に出会う機会が減ってしまい、 そのブースター効果を受けることが少なくなっているのです。 ●予防接種 回数の意義を知っていれば‥‥ 予防接種へ、さらに積極的に取り組めるのではないでしょうか。 |
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