健康エッセイ4月号(掲載日2006年4月11日) 小児科へ戻る |
●新しい体験(=コミュニケーション)が、新たに湧き上がる力を生む。 先日、我が家で私の知り合い数人と俳句会を開きました。 というのも、私と私の母親が何年か俳句を続けています。 ちょうど我が家の庭のしだれ梅も見頃になってきたこともあり、我々の方からお誘いした訳です。 知り合いの方も、少し俳句には興味があったみたいです。 一人三句提出し(お題は梅、その他何でもOK.)、句の作者が誰だかわからないようにして、 出席者7名×3=21句の中から各人が10句を選ぶわけです。 句会に参加して下さった中に、Kさんと言われる方がおられました。 私の知り合いのさらに知り合いで、私は初対面です。俳句もされてるそうですが、 これまでどこにも発表したことがなく、ましてや今回のような俳句会は初めてということでした。 後で聞いたのですが、Kさんは、60歳代前半、約2年前に発病した脳出血の後遺症で、 車椅子を押してもらっての移動です。 言葉の面では、発語がわずかに可能なほかはほとんど会話はできません。 しかし、おそらく懸命な言語リハビリの成果でしょうか、 言葉の持つ意味の理解への障害はかなり回復されているようです。 それは、提出された立派な俳句でわかりました。 その句会は、和気あいあいのうちに進んでいきました。 Kさんはいろんな句が読み上げられるたび、 もちろんご自分の句が選ばれるたび(笑)嬉しそうな表情を浮かべておられました。 句会がお開きになったとき、 Kさんの奥さんが「(主人が)こんなに自分から笑って楽しそうにしているのは、 病気になってから初めてです。‥‥」と感想を漏らされていました。 「新しい体験(=コミュニケーション)が、新たに湧き上がる力を生む。」 −このことは古くから言われていることかもしれません。 しかし、最近我が家で開いた俳句会でそういう出来事が起こりました。 新たなコミュニケーションが表情を生き生きとする現場を目の当たりにして、 皆さんにお伝えしたわけです。 私のようになかなかコミュニケーションを取りづらい者でも、 パソコン(インターネット)さえできればさまざまな人たちとの交流も可能です。 俳句の世界も広がるかもしれません。 Kさんには、今すぐには難しくても、 将来的にパソコンをするという目標というか夢ができました。 少し勇気を出して新たなコミュニケーションにチャレンジすることによって、 新しい夢が生まれて来ることを間近に体験したひとときでした。 ☆句会当日参加者それぞれの代表句 車椅子に一枝の触るゝ枝垂れ梅 梅の香の人と楽しく暮らしてく あるじ病みのびほうだいの梅の花 亡夫植ゑし紅梅に客もてなさむ 紅梅のカーテン越しに香りけり 梅の会笑顔笑顔で集うなり そしてKさんの句は‥‥ 蝉鳴きぬ少年の日や遠い尾根 ◇ ◇ ◇ ▼新しいコミュニケーションは、病気の治療や予防にもなる気がします。 このことは、感覚的に比較的容易にわかると思います。 それを「直接」科学的に証明したものではありませんが、 コミュニケーションと脳科学について触れているweb page上の文章があるのでご紹介します。 『まなびの杜』第17号(?年秋) 特集「脳科学レポート」 ;東北大学 未来科学技術共同研究センター 川島龍太教授 著 http://www.bureau.tohoku.ac.jp/manabi/manabi17/mm17-45.html ↑やや長文です。 読むのに12-3分かかると思うので、お時間のあるとき読んでみて下さい。 |
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